ハロウィンの香り
ハロウィンの「集い」
10月31日は、ハロウィーンのお祭りの日。
賑やかなイベントや奇抜な仮装が行われるイメージが先行しますが、
元々は夏の終わりとともに秋の収穫を祝い、聖人や死者を祀る祭礼に流れを汲む、ヨーロッパの長い風習です。
2000年以上前の習わしに由来し、
10月31日を1年の終わりとして現世に生きる者と死者の世界との境が曖昧になる日だとする古代ケルト民族の思想と、
聖人たちに祈りを捧げるキリスト教の「万聖節」とが結びついたことが、ハロウィン祭の起源とされています。
いわば、生者だけでなく、聖人も死者もかつての姿を現して、再びこの世を訪れる「集い」の日。
亡き家族の魂が帰る日として想い弔う、日本のお盆のような風習です。
紛れ込む「招かれざる客」?
ただし魂たちの門扉が一斉に開かれるその日には、
招かれざる者ー悪霊や魔物、邪悪な呪いなども私たちに近づきやすくなるとされ、
この世に生きる者たちは魂に祈りを捧げると同時に、身を守ることも忘れてはならないと考えられました。
現代のハロウィン祭では、そうした風習から、魔女や怪物に扮した人が街中を練り歩き、それを追い払うようなイベントを楽しむようになっていますね。
アメリカでは、「Trick or Treat」(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ)というお決まりの文句とともに、
こどもたちが可愛らしいオバケの仮装をして各家にお菓子をもらいに回るイベントとなり、
今や日本でもお馴染みの光景となっています。
「魔除け」とハーブ
ハロウィンに限らず、故人や聖人の魂を弔う際などに、
そこに紛れて邪悪なものたちが私たちに近づこうとしたり、死者の安らかな眠りを妨害したりするという考えは古来からあり、
それらから身を守るための術やアイテムが多くの記録に残されています。
そしてそのアイテムの多くは、ハーブなのです。
~「守り、祓う」ハーブたち~
古来から世界中の土地土地で、
その地に根ざした香りのする植物=ハーブは、
香りを嗅いだり煮出して肌に塗ったり飲んだりすることで、
傷の手当てになったり気持ちを鼓舞したり鎮めたりと、
からだと心の状態を変化させることが経験的に発見され、様々に利用されてきました。
古代の人々にとって、現代でいうところの「治療」は「祈祷」に近かったと言えるでしょう。
バランスを崩したからだと心を治そうとするとき、
ハーブの香りや成分を物理的に利用するとともに、多くの場合そこには「祈る」という儀式が存在しました。
そしてその祈りは、心身を「浄める」ことで不調を取り除こうとするものです。
それは、得体の知れない悪魔のようなものー今でいうところの病原菌やウィルスなど、心身の病を引き起こすすべてのものを「祓う」こと。
悪いものを追い払って浄化する、そのために役立つことを知り、利用され続けてきたのがハーブ。
ハーブは古代の人々にとって、忍び寄る病や心身のトラブルから身を守るための「魔除け」そのものだったのです。
「悪夢を寄せつけない」
ローズマリー
浄化や魔除けのハーブといえば、ローズマリー。
目の覚めるスッキリとした香りが特徴ですが、古いおまじないでは「悪夢を寄せ付けない」と言われています。
それは、安らかな永遠の眠りを妨げないというところに由来しているかもしれません。
世界中の弔いの儀式でローズマリーが手向けられる風習があり、
古くはエジプトの墳墓の中からそのかけらが発見されています。
故人との思い出を象徴するとともに、悪霊を祓って死者の平安を守る意味や、再生への祈りがこめられてきたそうです。
後の世でローズマリーは、その薬理成分から、戦時下の病院内での感染予防のため薫香として利用され、
現代でも空間浄化のハーブとして利用されています。
「結界」をつくる?
ジュニパー
ペストが大流行した時代、その悪魔のような病を祓い浄化するために、ローズマリーとともに小枝が焚かれたのが「ジュニパー」。
和名は「セイヨウネズ」と言い、トゲのように鋭く尖った葉は物理的にもネズミなど病原を運ぶ生物を避けてくれるため、垣根としても利用されてきました。
良からぬものから身を守るための「結界」を張ってくれるようなハーブです。
また、からだの老廃物を取り除き濾過してくれる腎機能に働きかける成分からもわかるように、
ジュニパーはまさに心身の浄化のハーブ。
そのフレッシュな香りは、ハロウィンで言うところの「魔物がひそむ曖昧な境界線」を可視化してくれるようにくっきりとシャープです!
「冥界の木」
サイプレス
サイプレスは、その総称「イトスギ」と呼ぶ方がわかりやすいかもしれません。
スパイシーでフレッシュな香りのするヒノキ科の木で、
ゴッホの絵画に描かれたように、円錐形に伸びる姿が印象的です。
ギリシャやローマでは墓地に立つ木として親しまれ、
神話でお馴染みの冥界の王プルトン(プルート)の宮殿には、サイプレスの木が生えていたとされます。
サイプレスは、ヒノキ科の多くの木がそうであるように腐食に強い建材としても利用され、
病害に強く枯れにくいことでも知られています。
実際に現代でもその防腐特性から消臭のための香りとしても利用され、
「朽ちない」植物として死者の魂に寄り添いながら、息づく者のためには空気を浄化してくれる、そんな静かな癒しのハーブです。
ハロウィンに楽しむ!
アロマブレンド
オバケもシュッと吹き飛ばす!
ハロウィンアロマスプレー
フレッシュでシャープな香りで、
賑わう場所をクリーンに浄化しながら、ドキドキを楽しむ空間を演出♪
《ブレンドレシピ》
ローズマリー精油 2滴
ジュニパーベリー精油 1滴
サイプレス精油 1滴
レモン精油 2滴
《作り方&使い方》
30mLの遮光スプレーボトルに、無水エタノール5mL、精油合計6滴を入れてよく混ぜ、
最後に精製水25mLを加えてよく振り混ぜれば完成です。
香りを拡げたい空間にシュッとひと吹き!
※毎回よく振って使用し、1ヶ月程度を目安に使いきってください。
※スプレーする素材によっては染みや変形・変性の原因となる可能性があります。目立たない部分で試してから使用するなど確認のうえ利用してください。
※火気に注意してご使用ください。
※肌についた場合はせっけんで洗い流してください。
刺激的なカラードリンク!
ハロウィンハーブティー
鮮やかな赤や紫色をした天然ハーブティーを濃いめに淹れて、ハロウィンパーティーに彩りを♪
ブラッドカラーの色味には、アントシアニンとクエン酸たっぷりのハイビスカスブレンドを。
キリリとした酸味で疲れを吹き飛ばしてくれます。
夜空色のドリンクには、鮮やかな青や紫の色を持つバタフライピーやブルーマロウのブレンドティーを。
お菓子を食べ過ぎた胃腸やおしゃべりを楽しんだ喉を労ってくれます。
※ハーブは必ず食用として販売されているものを使ってください。
ポプリなど雑貨用のドライハーブや、鑑賞用の花束に入っているもの、園芸品種の苗等のものを自己判断で口にしないでください。
「魔除け」のハーブたちとその利用法を紐解くと、
現代のアロマテラピーや植物療法に通じるハーブの個性が見えてきます。
昔も今も、ハロウィンの夜には「魔除け」のハーブ!
街にひそむ見えないモンスターたちをかわしながら、クリーンな空間づくりをしてみましょう♪
\この記事を書いた人/
大塚麻子
オーダーメイドトリートメントを提供する『Aroma Berta』主宰
英国IFPA認定・国際プロフェッショナルアロマセラピスト
日本心理学会認定心理士
自然の恵みアロマとハーブの魅力と、毎日を心地よく過ごすための利用法をわかりやすくお伝えしていきます♪