植物オイルでスキンケア
植物オイルの恵み
アロマセラピーで精油を利用するうえで欠かせないのが、植物オイルです。
これまでの記事でもレシピの中に度々登場していますが、
今回は改めて植物オイルの奥深い世界をご紹介します。
「植物オイル」って何?
種や実の中に含まれるオイル分が「植物オイル」です。
ナッツ類などの様々な植物の種や実(種実類)は、太古の昔から大切な栄養源として採取されてきましたが、人間にとってその利用方法は食用に留まりませんでした。
そこに含まれるオイルを、皮膚の保護や治療のために身体に塗ったり、宗教儀式の際に顔などに塗ったりと、
その成分や特性を発見しながら、意味や目的を持って色々に利用してきたのです。
例えば、オリーブオイル。
オリーブの実は栄養豊富な食糧になるだけでなく、そのオイルは料理に使われるのはもちろんのこと、スキンケアとして顔のクレンジングや保湿のためにも使われます。
また、カトリック教会の洗礼の場で行われる「塗油儀式」では、香料を含むオリーブオイルを身体に塗るのが伝統です。
そして長い歴史を重ね、現代に受け継がれているアロマセラピーにおいても、
植物オイルはスキントリートメントの際に皮膚を通して身体に精油を「運ぶ(carry)」=「キャリアオイル」(またはベースオイル)として、
また植物オイルそのものの特性においても、重要な役割を担っているのです。
植物オイルに含まれる宝
「不飽和脂肪酸」
植物オイルはそれ自体に豊富な成分を含んでおり、体内の物質代謝などにアクティブに働く不飽和脂肪酸を多く含むことが特徴です。
不飽和脂肪酸の中には生命活動に必要不可欠な「必須脂肪酸」もあり、これらは体内で合成できないので、何らかの形で摂取して補わなければならない栄養成分です。
例えば亜麻仁油やヘンプオイルなどに含まれる「(α,γ)-リノレン酸」などですが、血圧やコレステロールが気になるときのヘルシーオイルの成分として耳にしたことがあるかもしれませんね。
こうした不飽和脂肪酸は身体の色々な働きを促すことから、
アロマセラピーのキャリアオイル(ベースオイル)としても、その種類によって様々な場面で利用することができます。
アロマトリートメントに
「皮膚のビタミン」とも言われる栄養豊富な植物オイルたち。
アロマセラピーでスキントリートメントに用いるときは、その多彩な植物オイルの中から肌質や悩みに合わせて選ぶことができます。
植物オイルの種類
〇ホホバオイル
ツゲ科の植物「ホホバ」の実から採れるオイルです。
“jojoba”という呼び名は、アメリカ(,メキシコ)の原住民ネイティブアメリカンの言葉に由来していると言います。
原住民たちは灼熱の環境で生き抜くホホバの木の実を、強い日差しによる乾燥から肌や髪を守ったり、擦り傷の保護に使ったりと、「金の液」と呼んで重用してきたそう。
精製前のホホバオイルは黄金色に澄み渡り、まさに金色に輝く液体です!
正確には油脂ではなく液体ワックスと呼べるもので、ヒトの皮脂に近い組成のため肌に塗るとよく馴染み、油膜を残さない心地良い使用感です。
すべての肌質に使うことができ、肌の上でも酸化しにくいので脂性肌やニキビ肌などのトラブルにも刺激を与えずに、穏やかに肌バランスを整えてくれます。
〇スイートアーモンドオイル
バラ科のアーモンドの種子から採れるオイルです。
肌に優しく、敏感な肌の保湿にも安全に使えるため、ベビーマッサージのためのオイルやベビーケア製品に広く使われています。乾燥性の敏感肌にも適していて、カサついて痒みもあるアレルギー肌も、そっと守ってくれます。
〇グレープシードオイル
ブドウの種子から採れるオイルで、ワイン醸造後の種を粉砕して搾ることで得られます。
さらっとしたクセの無い使用感が特徴のクリアなオイルで、少量でも伸びが良いので全身など広範囲の保湿やトリートメントにも利用しやすいオイルです。また、油分を抑えたスキンケアをしたい脂性肌やニキビ肌にもおすすめです。
ビタミンE(α-トコフェロール)やフィトステロールを多く含むので、肌を柔らかく整えたいときにも。
〇シアバター
アカテツ科の植物「シア」の実から採れるバター状の油脂です。
常温で固体なので、マッサージオイルとしてではなく、クリームとして肌に塗って利用されます。
アフリカの大地に暮らす人々が、強い日差しから肌を守りたいときに大切に利用してきた神聖な木で、実をつけるまでには25~30年かかるそうです。
そのスキンケア特性から「若返りの木」とも呼ばれているシアバター。
水分と馴染みやすい成分を含むため、シワやごわつきなどの乾燥ダメージが気になる肌のスキンケアにおすすめです。
ご紹介したオイル以外にも、ローズヒップ油や小麦胚芽油(ウィートジャーム)、アルガンオイルやココナッツオイルなど、スキンケアに利用できる植物オイルはまだまだたくさんあり、利用法も様々。
それにとどまらず、世界のスキンケア文化から新しく発見されたり、注目されたりする植物成分は日々増えていく一方で、
自然の恵みの多さに驚くばかりです。
求める使用感や肌悩みに応じて、豊かな植物の恵みをいかしたスキンケアをぜひ試してみてくださいね。
参考文献;
『アロマテラピーのベースオイル』 ルート・フォン・ブラウンシュヴァイク 著 手塚千史 訳 フレグランスジャーナル社
『ハーブ学名語源事典』 大槻真一郎・尾﨑由紀子 著 東京堂出版
\この記事を書いた人/
大塚麻子
オーダーメイドトリートメントを提供する『Aroma Berta』主宰
英国IFPA認定・国際プロフェッショナルアロマセラピスト
日本心理学会認定心理士
自然の恵みアロマとハーブの魅力と、毎日を心地よく過ごすための利用法をわかりやすくお伝えしていきます♪