心地良い空間と眠りを生み出す香りの秘密
「心地良い空間」の香りイメージ
よく、
「森の中にいるような香りはありますか?」
という質問を受けます。
森林の中で感じられる清々しさ、
「空気が美味しい」と表現されるような、生み出されたばかりの新鮮な酸素を含む空気、
そして、そこに息づく何種類もの木や草花の香りが、森の中の潤った空気の中に溶け込んでいる、あの香り。
訪れたことのある森林の場所や、そこに生息していた植物は皆違うはずなのに、
「森みたいな香り」と言うと、そのイメージは不思議と共有できてしまう。
そしてその香りイメージは多くの人にとって、「心地良さ」や「リラックス感」、「安心感」などのイメージそのものとなっています。
でも、その空気をまるごと瓶に詰めて持ち帰り、好きなときに蓋を開けては香りを楽しむ、というようなことはなかなかに難しい。
まして、皆が共有しているような、とても抽象的で、それでいて普遍的なたったひとつだけの「森の香り」を、具体的な形に現すことも難しいものです。
ただ、逆に言えば、天然の香りのブレンドによって、
そのイメージは幾通りにも、無限に生み出し表現することができるということでもあります。
森はなぜ心地良いのか
その答えは、ひとつではないでしょう。
耳に流れ込む弾むような鳥のさえずりやリズミカルに響く虫の声、
遠くにせせらぐ川や力強い滝の水音、
潤いに満ちたフレッシュな空気。
どれも私たち人間の心を解放し洗い流すような、リフレッシュ感をもたらす要素に数えられます。
そしてもうひとつは、森を形成している、そこに生息する樹木の存在そのもの。
たとえば、日本に生まれ育った人々にとって最も馴染み深い「心地良い香りのする木」のひとつが、檜(ヒノキ)でしょう。
ヒノキの香りには、枝や葉、木部などの部位による違いはありますが、
緊張をほぐしたり気持ちを穏やかに整えたりするエステル類や、
心身をリフレッシュさせる森林浴効果※をもたらすモノテルペン系の芳香成分などが含まれています。
こうした木々そのものからほのかに放たれる香りは、森の中で感じる心地良さの大きな理由のひとつです。
※森林の中で過ごすことで、血圧やストレスホルモンの低下、免疫細胞やリラックス時に優位になる副交感神経が高まるなどの現象。
重なりあう植物たちの香り
さらに、森が森である理由は、その場所がたくさんの異なる植物から成り立っていること。
見上げるような大きな木があれば小さな木もあり、そこには果実がなっているかもしれません。
また、木の根元には、色々な草が生え、そこには小さな花も咲いているかもしれません。
森を成す木の種類にもよりますが、
様々な植物が織り成す幾層もの厚み、奥行きのある空間こそ、「森」のイメージでしょう。
そして私たちは、植物たちが集まるその空間で、
木や草、花や果実の香りが豊かに重なりあうことで生まれた、「森の香り」を感じるのです。
心地良い「香りの立体空間」をアロマで
様々な植物たちが在ることで生まれる、森の空気の心地良さ。
最初の質問に戻りますが、その香りを再現するとしたら、どんな香りをブレンドしたら良いのでしょう?
お伝えした通り、答えは幾通りも無限にあるはずですが、
ここでは森の「立体感」を味わうための香りを考えてみます。
お話してきたように、森の中では幾つかの植物の形ー
つまり木や、草(葉)や、花や、そして果実など香りの趣きも異なるものが、重なりあうことで奥行きが生まれます。
そこで、
たとえば、樹木には清々しいヒノキの香りを、
草葉の香りには、クラリセージのハーブの爽やかさを、
花の香りには、穏やかなラベンダーの香りを、
果実の香りには、フレッシュで深みのあるベルガモットの香りを…
ブレンドすることで、まるで森の中にいるような香りの奥行きと、
そして穏やかに心身を整える森の空気感を表現することになります。
心惹かれるブレンドの秘密
実はご紹介したブレンドは、
このブログを掲載しているアロマブルームで不動の人気を誇る安眠・リラックスブレンドのレシピです。
人々を惹き付けるこの香りの秘密は何だろう?と考えた時に浮かんだのは、
森のように植物が重なりあう「天然の香りの立体空間」を生み出すということ。
ブレンド名に「森」は入っていませんし、気候風土の好みが違うこの4種類の植物が並び育つ環境が実際にあるかは別として、
多様な植物が混ざり合う奥行きのあるアロマブレンドは、人々に心地良さをもたらすのだろうと思います。
森の在り方を考えてみれば、それはとても当たり前のことだったのです。
香りの相乗効果
そして、この人気ブレンドは単に香りの奥行きを生むだけでなく、
ヒノキは高い森林浴効果を得たいとき、
クラリセージはホルモンのバランスを整えたいとき、
ラベンダーは心落ち着きたいとき、
ベルガモットは自律神経のバランスを整えたいとき…
など、それぞれが穏やかでストレスフリーな気分を取り戻したい場面やゆっくり眠りたい時に選ばれる香り。
香りはホルモンや神経の働きを調整する脳へダイレクトに届くものですが、
たとえば幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンや、
良眠や安心感に関わるセロトニンなどの脳内物質は、こうした香りを嗅ぐことでも分泌されると言われています。
この4種の香りが四重奏のように響き脳に届くことで、相乗的に深い心地良さを生み出すのでしょう。
重なりあうことで拡がる香りの立体的なイメージと、包まれる心地良さ。
1日の終わりには、好みの木と草、花と果実のアロマブレンドで、
静かな月夜の森で寝ころぶようなリラックスタイムを演出してみてはいかがですか♪
\この記事を書いた人/
大塚麻子
オーダーメイドトリートメントを提供する『Aroma Berta』主宰
英国IFPA認定・国際プロフェッショナルアロマセラピスト
日本心理学会認定心理士
自然の恵みアロマとハーブの魅力と、毎日を心地よく過ごすための利用法をわかりやすくお伝えしていきます♪