黄金のゆずの香り
「和の香り」、「日本の香り」として浸透している柚子(ゆず)の香り。
毎年12月22日頃の冬至の日には、柚子を浮かべた湯に浸かり、
その温かく心解れる香りに包まれながら身体を芯から温める柚子湯の風習がありますね。
風邪や肌の乾燥などのトラブルを防いで寒い季節を丈夫に乗り越えるための知恵として受け継がれ、日本の冬の風物詩となっています。
黄金の果実
そのきりりとした中に温かみを秘めた特有の香りを持つ黄金の果実は、
はじめ中国から伝わったとされています。
その後長い間、日本の山奥でひっそりと人々の暮らしに役立てられながら根づいていましたが、
現在のように日本中の人々に親しまれる果樹ではなかったようです。
日本のゆずの香りを紐解くのに、欠かせない地名があります。
それは、徳島県の木頭村(きとうそん。現・那賀町)。
香り高い日本の柚子の原点、ふるさとです。
日本を変えた小さな村
戦後の高度成長期の中、高い山々に囲まれ自然の中での暮らしをひっそりと続けていた村で、
そこに住まう人々の健やかな心と体のために役立てられていたのが、 村に根づき大切にされていた柚子の木でした。
塩など手に入れにくい貴重な調味料の代わりに柚子を搾ったり、保存食として利用したり、薬湯にしたりして、
村人の生活の知恵に欠かせない果実だった柚子。
厳しい自然環境や激しい寒暖差といった木頭特有の気候風土の中で育った柚子は、
香りも味も格別に力強く、そして黄金色に輝いていました。
村の支援のために町から訪れた一人の青年がその木頭の柚子の輝くばかりの生命力に気づいたことで、
日本で初めて柚子の本格栽培が始まったそうです。
いくつもの苦難と長い年月を越え村を挙げて取り組んだ木頭の柚子栽培は、やがて文字通りに実を結び、
「木頭ゆず」は日本全国にその魅力が知られていきます。
「日本の香り」へ
柚子といえば、香り。
そしてその香りは、料理の風味を際立たせ、アクセントを加え、食欲を刺激します。
「香り高い」木頭のゆずは、
料理店でも家庭でも、瞬く間に日本中の食卓を彩るようになりました。
木頭のゆずは名実ともに、「日本の香り」になっていったのです。
柚子の香りの魅力
柚子の香りは、オレンジやグレープフルーツ、ベルガモットなど、他のどの柑橘類とも違う個性を持っています。
香り立つフレッシュな酸味はきりりとして個性的、それでいてほんのりと温かく優しい。
柚子湯で心身が解きほぐれるように、
安心感と温かさを与え、心を満たしてくれるゆず特有の香りは、日本が誇る和の素材として、
今や世界の料理やお菓子、パフュームの分野でも注目の的です。
柚子の花
寄り添う香り
柚子の香りの特徴としてもう一つ忘れてならないのは、「添えられる」のも得意ということ。
汁物や魚料理の仕上げにそっと添えられる姿そのものに、
奥ゆかしく寄り添うのも得意な香りです。
そんなところも、日本的な美に通じるのかもしれませんね。
他の個性を持つ香りと合わせても邪魔をせずしっくりと馴染みながら、
しっかり個性を発揮してアクセントを加えてくれる、決して隠れない香り。
あらゆる素材とのコラボレーションにも新たな発見を与えてくれる香りです。
冬至湯のあったか柚子ブレンド
木頭ゆず精油 3滴
ラベンダー精油 1滴
ティートゥリー精油 1滴
いつものリラックスブレンドに、香り高い柚子を加えてみると、まろやかでフレッシュな変化を楽しめます。
冬至の日にはバスソルトに加えて、幸せなバスタイムを♪
《アロマバスの楽しみかた》
① 精油合計5滴までを加えた植物オイル(5ml程度)と天然塩大さじ1またはエプソムソルト1回分※を混ぜ合わせる。
② ①をバスタブに入れ、さらにお湯をよくかき混ぜてから入浴する。
※エプソムソルトの1回の入浴のための分量は製品ごとに異なります。
小さな村から世界へ羽ばたき、日本を代表する香りとなった「ゆず」。
黄金の果実が辿った温かくて輝かしい軌跡を思いながら、その魅力を大切に味わっていきたいですね。
参考文献;『黄金の村のゆず物語』 麻井みよこ著 ポプラ社
\この記事を書いた人/
大塚麻子
オーダーメイドトリートメントを提供する『Aroma Berta』主宰
英国IFPA認定・国際プロフェッショナルアロマセラピスト
日本心理学会認定心理士
自然の恵みアロマとハーブの魅力と、毎日を心地よく過ごすための利用法をわかりやすくお伝えしていきます♪