寄せ付けない。植物の香りと虫
昨年12月、海外で問題化しているトコジラミの被害が日本でも増えているというニュースがに話題になり、国内外の宿泊施設を利用する際ちょっと気になってしまうかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
トコジラミに限らず、不快感を与えられる虫とは縁のない快適な生活を送りたいもの。
今回は、虫が嫌いな香りについてご紹介します。
自然界に生きる植物と虫
動物のように動けない植物は、生命を存続させるために植物自身の中で様々な成分を作り出します。
例えば、「虫を引き寄せる香り」と「虫を寄せ付けない香り」があります。
植物は子孫繁栄のためには受粉が必要となるため、おしべの花粉をめしべに運ぶ媒体となる虫を香りで引き寄せます。
反対に害虫などから自らを守るため虫を寄せ付けない香りを作り出します。
虫の行動をコントロールするほか細菌感染から身を守るなど、香り成分は植物の生命維持に重要な役割を果たしています。
南フランス式虫よけ
自然豊かな南フランスにあるレストランのテラス席で使われていた虫よけ。
オレンジにスパイスのクローブを刺している100%植物性、化学合成成分を使わないとっても自然に優しい虫よけです。
夜にはキャンドルに火を灯して食事を楽しむ・・素敵ですね。
蚊は柑橘系の香りを嫌う性質があると言われ、クローブに含まれるオイゲノールやオレンジに含まれるリモネンはハエが嫌う香りと言われていますので、南フランス式虫よけは役立ちそうです。
食事を楽しむ空間作りのため化学的成分を使わず植物の香りを有効活用した南フランス式虫よけです。
樟脳の木「クスノキ」
日本で虫よけに昔から使われている植物と言えば、クスノキ。
クスノキから抽出される樟脳(カンファー)という成分が虫が苦手な香りのため、古くから「樟脳(しょうのう)」という名称の防虫剤として使用されてきました。
学名:Cinnamomum camphora
科名:クスノキ科
主な生産地:日本、台湾
抽出部位:木部
抽出方法:水蒸気蒸留法
南洋植物のクスノキは、日本では九州・四国で多く見られる樹木で、クスノキの精油はフレッシュでシャープな清涼感ある香りです。
虫除けになることから、厄を払う、厄を除けるに通じるご神木として九州・四国では多くの神社に植えられるようになったとされており、神社でよく見かける木でもあります。
防虫剤として販売されている樟脳の代わりに、クスノキ精油を滴下したコットンをタンスやクローゼットに入れて使用してもいいですね。
※精油を使用する際はシミにならないよう洋服などの布地に直接コットンが触れないよう気をつけてお使いください。
「オレガノ」
肉や魚のくさみを消すなどイタリア料理や地中海料理に欠かせないハーブ、オレガノ。
和名でハナハッカと呼ばれるオレガノは淡紅色の可愛い花を咲かせ、葉や花からオレガノの精油が作られます。
学名:Origanum vulgare
科名:シソ科
主な生産地:地中海沿岸
抽出部位:花、葉
抽出方法:水蒸気蒸留法
オレガノには精油成分のチモールやカルバクロールが含まれておりスーッとした清涼感のあるスパイシーな香りがします。
ピザっぽい香り、ミネストローネっぽいという人がいれば、病院っぽい香りと表現する人も。
チーズやトマトとも相性が良く料理を美味しくしてくれるオレガノですが、虫には苦手な香りのようです。
2023年12月5日に配信された公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)のニュースレターで、オレガノ精油とトコジラミの研究データが紹介されていました。
内容は、濃度の異なるオレガノ精油のトコジラミ忌避作用を、3時間後から24時間後までディート(合成防虫剤)と比較した研究したもので、いずれの濃度でも効果がありその持続性は濃度依るようです。
9時間後、濃度10%で65%、濃度40%ではDEETと同じ100%だったとの研究結果でした。
▼「天然の香りで虫対策!アロマのトコジラミに対する忌避作用」
https://www.aromakankyo.or.jp/newsftp/20231205bedbug_aroma.pdf
※引用元:公益社団法人 日本アロマ環境協会
※上記ニュースレターに書かれている忌避作用とは、虫を寄せ付けない虫よけ作用のことです。
今回は、オレガノとクスノキの精油を使ったリネンスプレーの作り方をご紹介いたします。
オレガノ&クスノキで作る爽やかリネンスプレー
<精油ブレンドレシピ>
・オレガノ 2滴
・クスノキ 9滴
・ユーカリ・ラディアータ 8滴
・シトロネラ 2滴
・マージョラム・スイート 4滴
<用意するもの> ※できあがり約50ml
・無水エタノール 10ml
・精製水 40ml
・精油 25~50滴
・遮光スプレー容器 50ml
<精油濃度2.5%の作り方>
①50mlの遮光スプレー容器に無水エタノール10mlを入れます。
②上記レシピの精油25滴を加えよく混ぜます。
③精製水40mlを加えてよく振って混ぜればできあがり。
※精油濃度5%で作る場合は、ブレンドレシピ2倍で作ってください。
<ご使用について>
※使用する際は、毎回容器を良く振ってからお使いください。
※寝具にご使用になる場合は、肌にアロマスプレーがつかないよう乾いてからお使いください。
※お肌への使用はお控えください。
※高温多湿を避け冷暗所で保管し、保管期限3週間を目安にできるだけ早めに使い切ってください。
虫が嫌う香りは人間にとっては心地良い香りだったりします。虫を寄せ付けない心地良い環境に作りに植物の香りを取り入れてみてはいかがでしょう。
\この記事を書いた人/
大原万喜子
アロマインストラクター、アロマ空間デザイナー、ハーバルプラクティショナー
アロマ専門店「アロマブルーム」を運営する株式会社フォーシーズHDの商品企画を担当